『小さいころに置いてきたもの』 | Chipapa の備忘録

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忘却は、人間の味方であり敵であり。。忘れたくない珠玉の思い出達を書いていこう♪

小さいころに置いてきたもの (新潮文庫)/黒柳 徹子

¥578
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黒柳徹子さんが、「徹子の部屋」や「世界不思議発見」なんかでお話する、あの、可愛らしくて、独特の語り口のまんまが文章になったような本。

小さい頃に亡くなった弟さんのこと。実は、黒柳さんとはすごく仲がよかったのに、小学校低学年の頃、敗血症で突然亡くなってしまって、全く記憶がないそうで。その後、黒柳さんのお父様が戦争にいったり、空襲警報におびやかされたり、疎開を続けたり、あまりに心の負担が多かったからか、その弟さんの記憶が、まるで「誰かが、弟との思い出をピンセットか何かで、一つずつつまんで、どこかに持っていってしまったように」全くないのだそう。

忘却は、ときに、人にとってすごい味方。
大切な弟のことを忘れてしまうのはあまりに悲しいけれど、前に進むために、記憶を消してしまうほどに葛藤していた小さな少女だった黒柳さんのこと、その当時の時代背景、色々想像するととても切なくて、でも、人って強いのだと思わされます。

弟さんのことは、ツーンと胸が詰まったけど、赤塚不二夫さんの思い出、バイオリン奏者だったお父様の思い出、ユニセフ親善大使として訪れた途上国の子供たちの様子、それ以外にも、抱腹絶倒のハワイでのナンパ話。などなど、ほのぼのしたり、笑いそうになっちゃったり。

「小さいころに置いてきたもの」というタイトルどおり、別に小さい頃に置いてきたんじゃなくても、なんとなく、すごく優しくて、心にサプリな感じの本です。

そうそうそれから、最後にビッグプレゼントがありました。

97歳の現役写真家、笹本恒子さんが解説を書いていること。
とてもみずみずしい文章で、本当にお年を感じさせない。
何歳になっても、夢を描き続ける人に、老いは全然近づけないのだと思いました。