「『大発見』の思考法」 | Chipapa の備忘録

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「大発見」の思考法 (文春新書)/文藝春秋

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iPS細胞を生み出して2012年のノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥先生と、トップクォークというものの存在を予言して2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英先生の対談。

iPS細胞っていうのを初めて聞いたとき、「え?人間の臓器全部取り替えられるの?じゃ、人間、死ななくなっちゃうんじゃない?」と思いました。

そのうち、

『あの人は亡くなったんだってね』
『なんだか、iPS細胞から作った心臓がちょっと合わなかったみたいだよ』
『そりゃぁ、運が悪かったねぇ。。』

なんて会話が普通になるのか、と思いました。

それがどこまで現実的か、私には良く分からないのだけど、でも、結構本気で近い未来に現実になるかもしれないな、と思って読んでみました。

まぁ、その答えが見つかったわけではないのですが。

さすが、ノーベル賞学者お二人の対談は、本当に広がりがあり、学びのポイント満載です。

科学の具体的なことは私には良く分からないのだけど、お二人の生き方、選択の仕方には、すごく参考になります。

特に、山中先生は、世代的に若く、私たちの年代に近いこともあり、学部を卒業した大学とは違う大学院で学んだり、研究開発費をもらうために必死のプレゼンテーションをしたり、ときにハッタリで面接を乗り切ったり、海外の編集者とのネットワークを地道に築いたり、アメリカでの研究者の立場と日本の研究者の立場の差を肌で感じていらっしゃるところとか、「iPS」というネーミングも、実は、iMac や iPod にあやかろう、と小文字のiにしたという意外にミーハーな裏話があったり、すごく現代的で現実的です。なんというか、比べるのもおこがましいですが、バブル崩壊後に社会に出て、就職氷河期やリーマンショックなどを経験している我々受難の世代には、本当に勇気づけられるエピソードが満載なのです。

そして、益川先生の哲学。
「モーツァルトは『天才』ではなくて、『天才的』だから嫌いなの。やりっぱなしで磨きをかけていない。天才は推敲もできる人」
「『眼高手低』評論はうまいけれど実作はヘタだという意味だけど、学生の頃の先生に、科学者として目標は高く置きなさい、しかし、着実にできるところから一つ一つ積み上げていきなさい、と言われたことから、座右の銘にしている」
とか。

超文系の私には、門外漢も甚だしい本ではありましたが、すごく読んで良かったと思った本。